まず、「小規模企業共済(しょうきぼきぎょうきょうさい)」は、
中小機構(国が運営する独立行政法人)が提供している“個人事業主のための退職金制度”です。
会社員でいう退職金にあたる制度で、掛金を積み立てておくと、
廃業や引退のときに「共済金」として受け取ることができます。
💰 掛金と控除
- 月額1,000円〜70,000円まで500円単位で自由設定
- 全額が「所得控除」の対象(=節税効果が非常に大きい)
たとえば月2万円を積み立てていれば、年間24万円がそのまま所得から差し引かれます。
税率が20%の人なら、年間4万8千円の節税です。
🧾 受け取り方も柔軟
- 一括受取 → 退職所得扱い(控除が大きく税負担が少ない)
- 分割受取 → 公的年金等控除の対象(年金扱い)
- 併用受取も可能
つまり、事業の出口戦略(引退・廃業・法人化)に合わせて最も有利な形で受け取れます。
2. iDeCo(個人型確定拠出年金)とは?
もうひとつの代表的な制度が「iDeCo(イデコ)」です。
こちらは将来の年金を自分で積み立てて運用する制度です。
銀行・証券会社を通じて自分で口座を開設し、
掛金を投資信託などで運用しながら老後資金をつくっていきます。
💰 掛金上限
- 個人事業主:月68,000円まで
- 掛金全額が「所得控除」の対象
共済と同じく節税効果が高く、
月2万円積み立てると、所得から年間24万円を控除できます。
📈 投資で増やす仕組み
小規模企業共済は“積立型(元本重視)”ですが、
iDeCoは“運用型(投資による成長)”。
つまり、共済=守り、iDeCo=攻めという違いがあります。
長期的に運用すれば、運用益も非課税で増えていきます。
3. 共済とiDeCoの違いを比較
| 項目 | 小規模企業共済 | iDeCo(個人型確定拠出年金) |
|---|---|---|
| 運営 | 国(中小機構) | 金融機関(証券・銀行など) |
| 性格 | 退職金制度 | 年金制度 |
| 掛金 | 月1,000〜70,000円(自由変更可) | 月5,000〜68,000円(職業別上限) |
| 節税効果 | 掛金全額が所得控除 | 掛金全額が所得控除 |
| 運用リスク | なし(元本保証) | あり(投資商品による) |
| 引き出し時期 | 廃業・退職時など自由度あり | 原則60歳以降まで引き出し不可 |
| 手続き | 商工会・金融機関・中小機構 | 銀行・証券会社など |
| 途中解約 | 一定条件で可能 | 不可(原則60歳まで固定) |
この表を見ると、どちらか一方で十分ではなく、
性質の違いをうまく使い分けるのが理想です。
4. どちらを先に始めるべきか
結論から言うと、
✅ まずは小規模企業共済から始めるのがおすすめです。
理由は3つあります。
(1)元本保証でリスクがない
開業初期は収入が安定しない時期。
そんな中で投資リスクを取るより、元本が確実に積み上がる共済が安心です。
(2)資金繰りが厳しいときに貸付制度が使える
共済の大きな特徴が「自分の積立金を担保に借入ができる」点。
必要なときに、低金利で即日融資が受けられます。
銀行より早く、信用保証も不要。
この“事業の安全弁”としての機能は非常に優れています。
(3)出口(廃業・法人化)に合わせて調整できる
将来法人化する場合、積立金を退職金として受け取れるため、
税負担を抑えつつ、スムーズに次の段階へ移行できます。
5. iDeCoを始めるタイミング
共済を始めて資金に余裕が出てきたら、
次のステップとしてiDeCoを導入すると効果的です。
iDeCoの強みは「長期・複利・非課税」。
毎月一定額をコツコツ積み立てていけば、
20年・30年後には大きな資産形成になります。
ただし、原則60歳まで引き出せないため、
生活資金や事業資金を圧迫しない金額で始めることが大切です。
6. 節税効果のシミュレーション
例として、年間課税所得が400万円の個人事業主が
小規模企業共済とiDeCoを併用した場合を見てみましょう。
| 制度 | 掛金 | 節税額(税率20%の場合) |
|---|---|---|
| 小規模企業共済 | 月2万円(年24万円) | 約4.8万円 |
| iDeCo | 月1万円(年12万円) | 約2.4万円 |
| 合計 | 年36万円 | 約7.2万円の節税効果 |
つまり、毎月3万円を積み立てるだけで、
年間7万円以上の節税+将来の備えを同時に実現できます。
7. 注意点と実務アドバイス
✅ 掛金は無理のない金額で
共済もiDeCoも「継続すること」が最も大切です。
特に開業初年度はキャッシュが減りやすいため、
最初は少額(5,000〜10,000円)から始めても十分です。
✅ 節税目的だけで加入しない
共済やiDeCoは“将来のお金”を預ける制度。
短期的な節税だけを目的にすると、思わぬ資金繰り悪化を招きます。
✅ iDeCoは運用商品を慎重に選ぶ
低リスク型の「定期預金」から始め、慣れてきたらバランス型・株式型へ。
放置せず、年1回は見直しを行いましょう。
8. まとめ:事業と人生、両方を守る制度
小規模企業共済もiDeCoも、
「今」と「未来」の両方を支える仕組みです。
- 共済は“事業の安全弁”であり“退職金”
- iDeCoは“老後資金”であり“長期運用”
この2つを組み合わせることで、
個人事業主でも会社員に負けない安定した資金設計が可能になります。
私がこれまで支援してきた中でも、
早い段階から共済を始めていた方ほど、
数年後に「やっておいてよかった」と口をそろえて言います。
共済で守り、iDeCoで攻める。
この2本柱こそが、個人事業の“安心と成長”を支える最強の仕組みです。
