〜開業したらすぐに整えたい「事業の土台」4ステップ〜
開業届を提出してホッと一息。
でも、ここからが本当のスタートです。
事業をスムーズに運営していくためには、開業後すぐに「事業の仕組み」を整えることが大切です。
ここでは、個人事業主が最初にやるべき4つの準備——「屋号」「銀行口座」「印鑑」「経理体制」について、わかりやすく解説します。
① 屋号の決め方:小さなブランドづくりの第一歩
「屋号」とは、あなたの事業名のことです。
会社で言う“商号”にあたりますが、個人事業主の場合はもっと自由。
法律上の制約も少なく、自分の思いやサービス内容に合わせて好きに決められます。
屋号をつけるメリット
- 事業用の銀行口座を「屋号+氏名」で作れる
- 名刺や請求書で信頼感が高まる
- SNSやHPでもブランディングしやすい
屋号を決めるポイント
- 覚えやすく短い名前にする
(例:ことのはデザイン、サクラ会計サポート) - 誰が見ても内容が想像できる
(例:「○○サロン」「○○コンサルティング」など) - 検索して重複がないか確認
商標登録やドメイン重複は避ける
屋号は後から変更も可能ですが、開業届や口座名義、名刺などで統一しておくと信頼性が高まります。
② 銀行口座:プライベートと完全に分ける
個人事業主が陥りやすい失敗の一つが、「私用と事業用の口座を混ぜること」です。
これをやると経理が混乱し、確定申告のときに大変な手間になります。
口座を分けるメリット
- 売上・経費がひと目でわかる
- 会計ソフトとの連携がスムーズ
- 信用が高まり、融資・補助金申請にも有利
どの銀行を選ぶべきか?
- ネット銀行(楽天銀行・GMOあおぞらネット銀行・住信SBI)
→ 開設手続きが早く、振込手数料が安い - 地方銀行・信用金庫
→ 地元事業者との関係づくり・融資相談に強い
特におすすめは「ネット銀行+地域金融機関」の2本立て。
ネット銀行で日常管理をし、地域金融機関で信用づくりをするのが理想です。
口座名義の書き方
「屋号+個人名(例:小さな経営研究所 田中一郎)」という形式が基本です。
屋号入りの口座は信頼性が高く、取引先にも好印象を与えます。
③ 印鑑:ビジネスの“顔”になるツール
印鑑文化は少しずつデジタル化していますが、個人事業主にとって印鑑はまだまだ重要です。
特に、銀行口座開設や契約書、補助金申請などでは「印鑑登録された実印」や「角印」が求められる場面があります。
用意しておくと便利な3種類
- 実印 … 重要な契約・融資などに使用。市区町村で登録。
- 銀行印 … 銀行口座の届出印として登録。実印とは分けるのが安全。
- 角印(認印) … 見積書・請求書などの日常業務用。屋号入りが◎。
おすすめの作り方
- 素材は「柘」や「黒水牛」など長持ちするもの
- ネットでは「ハンコヤドットコム」「印鑑本舗」などが人気
- 屋号入りの角印はアフィリエイトにもなじむアイテム
最近は電子印鑑(PDFへの押印)を活用するケースも増えています。
クラウドサインやAdobe Acrobatでも簡単に作成できるため、書面とデジタル両方を準備しておくと安心です。
④ 経理の準備:お金の管理を仕組み化する
開業直後の一番の悩みは「お金の管理」です。
領収書、請求書、売上管理、経費の仕訳……慣れないうちは大変に感じます。
でも、最初にシステムを整えておけば、あとは自動化でラクになります。
会計ソフトを導入しよう
いまや紙の帳簿をつける時代ではありません。
クラウド会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生オンライン)を使えば、
・銀行口座やクレカと自動連携
・スマホで領収書を撮影 → 自動仕訳
・青色申告書を自動作成
まで一括管理が可能です。
クラウド会計を導入するメリットは、
- 確定申告が1日で終わる
- 知識がなくても税理士水準の帳簿ができる
- 税理士とデータ共有も簡単
青色申告の65万円控除を受けるには、複式簿記による帳簿付けが必要ですが、
クラウドソフトなら自動的に複式形式で処理されるので安心です。

経費管理のコツ
経費の考え方は「事業に必要ならOK」が原則です。
ただし、プライベートとの線引きを意識することが大切です。
よくある経費例
- 通信費(スマホ・Wi-Fi)
- 交通費(打ち合わせ・出張)
- 事務用品費(文具・パソコン)
- 会議費(お客様との打ち合わせカフェ代)
- 広告宣伝費(SNS広告・名刺作成費)
経費の整理方法
- 領収書・レシートは月ごとに封筒やファイルにまとめる
- クラウド会計アプリで「撮るだけ登録」
- 家事按分(例:自宅家賃の30%など)も忘れずに記録
この“経費整理の仕組み化”こそ、個人事業主の仕事をラクにする第一歩です。

経理を習慣化する3つのポイント
- 「1日5分ルール」
毎日少しずつ記帳。ためると苦痛、積み重ねるとラク。 - 「月末ルーティン」
売上・経費をざっと集計し、利益を確認。翌月の目標を設定。 - 「年間カレンダー化」
確定申告や納税スケジュールをあらかじめGoogleカレンダーに登録。
こうした「習慣化」が、事業の継続力につながります。
⑤ 開業後にやっておくと良いこと(+α)
- SNSやホームページを開設(屋号+発信内容で統一)
- 名刺・請求書テンプレートを作成
- 小規模企業共済やiDeCoを検討(節税対策)
- 商工会・よろず支援拠点に登録(無料相談が受けられる)
開業直後は、やることが多いように感じるかもしれませんが、
この「最初の1か月」で土台を整えておくと、1年後の差が大きく出ます。
まとめ:事業の“形”を整えることで、信頼が生まれる
開業届を出した瞬間から、あなたは事業主です。
でも、事業主として社会から信頼されるには、
屋号、銀行口座、印鑑、経理体制といった「見える形」を整えることが大切です。
これらを準備することで、取引先からの信用が高まり、補助金・融資・税務でもスムーズに対応できるようになります。
開業届が「スタートライン」だとすれば、
屋号と経理の整備は「走り出すための足場づくり」です。