〜「どこまで経費?」がスッキリわかる!個人事業主の経理入門〜
開業してまず悩むのが、「これは経費にしていいの?」という疑問。
経費を上手に活用すれば、節税効果が大きくなりますが、線引きが曖昧なまま申告するとトラブルのもとになります。
この記事では、個人事業主が知っておくべき「経費の考え方」と、「落とせるもの・落とせないもの」を具体的に整理します。
1. 経費とは?基本の考え方をまず理解しよう
経費とは、事業を続けるために必要な支出のことです。
つまり、「仕事のために使ったお金」であれば経費として認められます。
たとえば、
- お客様との打ち合わせで使ったカフェ代
- 事務所で使うパソコンやプリンター
- 取引先との移動交通費
- SNS広告やホームページの制作費
などは、すべて「事業のための支出」です。
逆に、プライベート目的で使ったものは経費にはなりません。
「仕事にも使っているけど、生活でも使う」もの(スマホ・自宅・車など)は、使用割合に応じて「家事按分(かじあんぶん)」する必要があります。
2. 経費で落とせるもの一覧【カテゴリ別】
以下は、個人事業主がよく使う経費をカテゴリー別にまとめた一覧です。
(青色申告・白色申告どちらにも共通)
📦 ① 仕入・販売関連費
- 商品の仕入れ代金
- 梱包材・配送費(宅配便・切手など)
- オンラインショップの手数料(BASE・STORES・メルカリなど)
👉 販売を行うビジネスでは最も基本的な経費。
💼 ② 通信・事務関連費
- スマホ・インターネットの通信費(業務使用分)
- パソコン・プリンター・文房具・コピー用紙
- クラウドソフト(月額利用料・サブスク)
- 郵送代・印紙代
👉 プライベート兼用の通信費は50%~70%を目安に按分。
🚃 ③ 交通・出張費
- 電車・バス・タクシー代
- ガソリン代・高速代(車を事業で使用する場合)
- 出張時の宿泊費・出張先での食事代(1人分)
👉 レジャーを兼ねた旅行はNG。業務目的であることが前提。
☕️ ④ 交際・接待費
- お客様との打ち合わせカフェ代
- 取引先との食事・会食(1人での飲食は不可)
- 手土産・贈答品(お中元・お歳暮など)
👉 支出理由が「営業・商談・取引関係の維持」であればOK。
🏢 ⑤ 地代家賃・水道光熱費
- 事務所の家賃
- 自宅兼事務所の場合は「家賃の一部」を按分(例:30%)
- 電気・ガス・水道代も同様に按分可能
👉 間取り図をもとに面積比で按分しておくと信頼性アップ。
🧾 ⑥ 広告宣伝費
- チラシ・名刺・ホームページ制作費
- SNS広告・Google広告などの掲載費
- 写真撮影・デザイン費用
👉 ブログ・LINE・SNS運用費用も業務目的なら経費に。
👔 ⑦ 消耗品費
- 10万円未満のパソコン・カメラ・机・椅子
- 事務用品・掃除用品・日常消耗品
👉 10万円以上のものは「減価償却資産」として数年に分けて計上。
🧑🏫 ⑧ 研修・教育費
- セミナー・講習会・オンラインスクール受講料
- ビジネス書・専門書
- コンサルティングや講師費用
👉 自己啓発目的ではなく「事業スキル向上」に関係していることが重要。
💳 ⑨ 租税公課・保険料
- 事業用の自動車税・固定資産税
- 商工会・商工会議所の会費
- 事業用保険(損害保険・PL保険など)
👉 所得税・住民税・国民健康保険料などは経費にならない。
🧍 ⑩ 外注費・人件費
- デザイナーやライターへの業務委託費
- 事務サポート・経理代行などへの報酬
- 家族への給与(青色申告者のみ)
👉 支払先・金額・内容を明確にして領収書・契約書を保存。
3. 経費で落とせないもの(間違いやすい例)
「これはダメなの?」と聞かれる代表的な支出をまとめます。
項目 | 理由 |
---|---|
自分や家族の生活費 | 事業と無関係な支出は対象外 |
生命保険・医療保険 | 個人の生活保障目的のため |
国民健康保険・年金 | 税金控除の対象にはなるが、経費ではない |
旅行やレジャー | 業務目的が証明できないと経費にならない |
趣味の書籍・映画・外食 | 仕事に直接関係がない支出はNG |
住宅ローン・家賃全額 | 按分が必要。事業使用部分のみ可 |
経費にできるか迷う場合は、
「もし税務署に説明を求められたら“業務目的”を明確に言えるか?」
を基準に判断すると良いでしょう。
4. 家事按分(かじあんぶん)を正しく行うコツ
自宅兼事務所や私用兼用の設備を使う場合、
「仕事に使った割合」だけを経費にできます。
よく使われる按分目安
項目 | 按分の目安 |
---|---|
家賃・光熱費 | 20〜50%(事業スペースの面積比) |
スマホ通信費 | 50%前後(業務利用の割合で判断) |
車両費 | 走行距離や使用日数の割合 |
明確なルールはありませんが、根拠(記録・メモ)を残しておくことが重要です。
青色申告の場合は帳簿に「按分計算表」を添付しておくと安心です。
5. 領収書・レシート管理のコツ
経費として認められるためには、「支出を証明する書類」が必要です。
必ず保存すべきもの
- 領収書・レシート
- 請求書・納品書
- クレジットカード明細(オンライン決済含む)
紙でも電子データでも構いません。
ただし、保存期間は7年間です(青色申告の場合)。
クラウド会計ソフトを使えば、スマホで領収書を撮影して自動保存できます。
freee・マネーフォワード・弥生などのアプリならOCR読み取り機能で金額も自動入力されます。

6. 節税のコツ:「経費を増やす」より「記録を残す」
節税というと「経費を増やす」と考えがちですが、
本当に重要なのは「正しい経費を、正確に記録する」ことです。
たとえば、
- 業務用スマホ代をきちんと按分して申告
- 打ち合わせ内容を領収書の裏にメモ
- 現金払いではなくクレカで支払い → 明細で自動記録
これだけでも、税務調査時の信頼度が格段に上がります。
青色申告特別控除(65万円)を受けるためには帳簿の整備が必須ですが、
クラウド会計ソフトを使えば、ほぼ自動で帳簿が作られます。

7. まとめ:経費は「証拠と説明」がすべて
経費で落とせるかどうかの判断は、
- 「事業に関係しているか」
- 「説明できる証拠があるか」
の2点に尽きます。
曖昧な支出も、使い方や説明次第で経費になるケースは多いです。
たとえば、仕事用のカフェ利用・セミナー参加・SNS広告などは、
記録さえ残しておけば立派な経費になります。
経費の整理は「お金の管理」そのもの。
日々の記録が、節税と経営の安定につながります。