〜開業したら必ず行う「社会保険の切り替え」完全ガイド〜
会社を退職して個人事業を始めると、最初に必要になるのが社会保険の切り替え手続きです。
今までは会社が自動的にやってくれていた「健康保険」と「厚生年金」。
個人事業主になると、これを自分で加入・手続きしなければなりません。
この記事では、開業した方が必ず行うべき
「国民健康保険」と「国民年金」への切り替えについて、
専門家の目線でわかりやすく整理します。
1. なぜ切り替えが必要なのか
会社員の間は、社会保険(健康保険・厚生年金)に自動的に加入していました。
保険料も給料から天引きされ、会社が半分を負担してくれていたため、
自分で意識することはほとんどなかったはずです。
しかし、開業して「個人事業主」になると、
社会保険の仕組みから外れます。
そのため、健康保険は「国民健康保険」へ、年金は「国民年金」へ切り替える必要があります。
これを行わないと、医療費が全額自己負担になってしまう恐れもあるため、
退職から日を空けずに必ず手続きを行いましょう。
2. 手続きの流れ(退職後〜開業直後まで)
退職後のスケジュール感をイメージすると、次のようになります。
| 時期 | 手続き内容 | 手続き先 |
|---|---|---|
| 退職後すぐ | 社会保険証を会社に返却 | 前職の会社 |
| 退職日〜14日以内 | 国民健康保険・国民年金への加入手続き | 市区町村役場 |
| 開業届提出 | 税務署(別手続き) | 税務署 |
この中で健康保険と年金の加入は、市区町村の窓口で同時に行えます。
「税務署」とは別の手続きなので注意しましょう。
3. 国民健康保険の加入手続き
📍 手続き場所
住所地の市区町村役場の「国民健康保険課」や「保険年金課」。
開業届の控えや本人確認書類を持って行けば、その場で加入できます。
🗓 手続き期限
退職日の翌日から14日以内。
もし遅れた場合でも加入はできますが、保険料は退職日の翌日に遡って発生します。
🧾 必要書類
- 健康保険資格喪失証明書(前職の会社が発行)
- 本人確認書類(マイナンバーカードなど)
- 印鑑
- マイナンバーカードまたは通知カード
- 開業届の控え(あるとスムーズ)
💰 保険料の計算方法
国民健康保険料は前年の所得をもとに計算されます。
ただし、開業初年度は前年の所得がゼロなので、最低金額での負担になります。
多くの自治体では月額1万円〜1.5万円前後が目安です。
2年目以降は、所得に応じて段階的に上がります。
扶養家族がいる場合も1人ひとりが加入対象になる点に注意しましょう。
4. 任意継続という選択肢
退職直後に多くの人が迷うのが、「会社の健康保険を継続できないか」という点です。
実は、退職後も**「健康保険の任意継続」**という制度を使えば、
最長2年間だけ前職の健康保険を継続できます。
✅ 任意継続の条件
- 退職前に2か月以上、社会保険に加入していたこと
- 退職日から20日以内に申請すること
💡 メリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 医療内容や扶養の仕組みが同じで安心 | 保険料は全額自己負担(会社負担分がなくなる) |
| 継続加入の手間が少ない | 所得が減っても保険料が高いままの場合あり |
初年度の所得が少ない場合は、国民健康保険の方が保険料が安くなるケースが多いです。
「前年の年収が高い人」だけ、任意継続を選ぶ価値があります。
5. 国民年金の加入手続き
📍 手続き場所
市区町村役場の「年金担当窓口」で、国民健康保険と同時に手続き可能。
🗓 手続き期限
退職日の翌日から14日以内。
遅れても加入できますが、未加入期間があると将来の年金額が減額されるため注意。
💰 保険料
国民年金の保険料は、全国一律。
2025年度は月額16,980円です。
ただし、前年の所得が低い場合は「免除・減免制度」を利用できます。
| 制度 | 対象 | 減額割合 |
|---|---|---|
| 全額免除 | 所得が一定以下 | 100%免除 |
| 3/4免除・半額免除 | 一定水準以下 | 75%・50%免除 |
| 学生納付特例 | 学生本人 | 後払い可 |
開業初年度でまだ収入が安定しない人は、必ず窓口で免除申請を検討してください。
6. 国民年金基金・iDeCoとの違い
国民年金は「基礎年金」と呼ばれ、全国民共通の制度です。
それに加えて、自分で将来の年金を増やす仕組みが「国民年金基金」と「iDeCo(個人型確定拠出年金)」です。
| 制度名 | 特徴 | メリット |
|---|---|---|
| 国民年金基金 | 公的な年金の上乗せ。加入者は自営業者中心。 | 将来の受取額が確定している。 |
| iDeCo | 自分で積立・運用する年金。 | 掛金が全額所得控除、節税効果が大きい。 |
どちらも「国民年金に上乗せして入る制度」で、
将来の不安を軽減するための選択肢です。
開業2年目以降、利益が安定してきたら積極的に検討すると良いでしょう。
7. 社会保険料控除で節税もできる
国民健康保険料・国民年金保険料を支払うと、
その全額を「社会保険料控除」として所得から差し引くことができます。
たとえば、年間で保険料を30万円払った場合、
所得が300万円なら課税所得が270万円に下がるため、
税率10%なら3万円の節税効果になります。
確定申告の際は、支払い証明書(領収書や控除証明書)を添付することを忘れずに。
8. 手続きのまとめ
| 内容 | 手続き先 | 期限 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 国民健康保険 | 市区町村役場 | 退職翌日から14日以内 | 前職の喪失証明書を持参 |
| 国民年金 | 市区町村役場 | 同上 | 免除申請も同時に検討 |
| 任意継続 | 健康保険組合 | 退職後20日以内 | 所得が高い人に有利 |
| iDeCo・共済 | 金融機関・中小機構 | 随時 | 節税効果あり |
9. まとめ:手続きは「負担」ではなく「安心の準備」
独立・開業というと、どうしても売上や集客のことに目が向きがちですが、
社会保険の切り替えは、それと同じくらい大切な“生活の土台”です。
特に健康保険と年金は、万が一のリスクに備える仕組み。
「もし病気になったら」「老後はどうなるか」を見据えて、早めに手続きを済ませましょう。
開業初年度は所得が安定しないため、免除・減額制度を上手に使うのがポイントです。
数年後、事業が軌道に乗ったときに「やっておいてよかった」と感じるはずです。
